Context Pool
Context Pool(コンテキストプール) とは、State / Projection Surface(状態面 / 投影面)の総体として記録された、投影の基質です。
コード、仕様、Issue、PR、会話ログ、実行ログ、判断記録、記憶、候補、仮説——アクターが参照しうる形で記録されたものは、すべてプールに属します。
プールは、PCE 1.0 の「潜在的コンテキストプール」の後継概念です。「潜在的」を外したのは、未記録・未観測の全体は プロジェクト現実 に属し、プールは記録された部分だけを指すからです。系譜は PCE の系譜 を参照してください。
プールは平らではありません。正規性の勾配で層化されます。
| 層 | 内容 | 既定の依拠可否 | 書き込み |
|---|---|---|---|
| canonical(正規) | 昇格済みの投影。仕様、判断記憶、マージ済みコード | 依拠してよい | Warrant 必須 |
| provisional(暫定) | 候補、仮説、未採用メモ、条件つき判定の記録 | 参照のみ | 自由 |
| raw(生) | 会話ログ、実行ログ、未構造の記録 | 参照のみ | 自由 |
この表が、PCE 3.0 の二つの法を一枚にまとめています。
記録は自由である。記録することは、昇格ではない。 検索できることは、依拠してよいことではない。
一つ目が生成を解放します。何でも記録してよく、候補は無料です。二つ目が汚染を防ぎます。プールから引き出せることと、前提にしてよいことは別です。
層は「依拠してよいか」を定めますが、プールにはもう一つ独立した軸があります。Reach(リーチ)——その項目が将来の断面に、既定で入るかどうかです。
- pull(低リーチ): 参照されるまで眠っている。コード、ADR、過去の Issue。Compile が関連性を判断したときだけ断面に入る。
- push(高リーチ): 将来の断面に既定で注入される。記憶、常設の規約、システムプロンプト。探されるのを待たず、後続を見つけに来る。
正規性とリーチは直交します。
| 低リーチ(pull) | 高リーチ(push) | |
|---|---|---|
| 正規 | マージ済みコード、ADR | 判断記憶、常設規約 |
| 暫定・生 | ログ、候補(正常な状態) | 汚染(あってはならない象限) |
右下が記憶汚染の正確な定義です。汚染とは、正規性なきリーチである。 問題は記録されたことではなく(記録は自由)、門を通っていないものが高リーチ面に着地して、既定の注入力を得たことです。
ここから規則が一つ出ます。
面のリーチが、要求される層を決める。高リーチ面には、正規層の項目しか置いてはならない。
プールの項目には二つの使い方があります。
- 参照(consult): 読む、検討する、比較の材料にする。どの層でも自由。
- 依拠(rely): 再検証なしに遷移の前提として使う。正規層は既定で可。暫定・生の層は、明示的な根拠なしに不可。
生ログを読んでアイデアを得ることと、生ログの記述を事実として実装することは、別の行為です。前者は参照であり自由、後者は依拠であり根拠を要します。詳しくは Reliance を参照してください。
プール上の操作は四つに整理されます。
Capture(記録)
Section titled “Capture(記録)”遷移の結果をプールへ書き戻すことです。門はありません。 すべての遷移の出力——差分、観測、会話、失敗、不採用候補——は、生または暫定の層へ自由に記録されます。記録の漏れは複利を止めるため、記録は多いほどよい。
Compile(断面の編成)
Section titled “Compile(断面の編成)”特定のアクターと遷移のために、プールから断面を切り出すことです。選び、編集し、順序づけ、欠落を埋め、矛盾を潰します。
Compile は Actor-local Situation Package の統治下にあります。断面の各項目には層と依拠可否を付します。「文脈より先に状況」の原則どおり、何を見せるかは、何をしてよいかの定義に従属します。
高リーチの項目(記憶など)には、Compile にもう一つの判定が加わります。既定で注入される記憶は、書かれた文脈とは別の文脈で適用されます。だから層と依拠可否に加えて、現在の文脈への適用可否を想起のたびに判定します。宣言された適用域の内側なら依拠してよく、外側または不明なら参照のみに降格します。詳しくは One Memory through PCE を参照してください。
Promote(昇格)
Section titled “Promote(昇格)”項目を上の層へ移すことです。生から暫定への構造化は自由です。正規層への昇格だけが門を持ちます。 Warrant(進行根拠) が必要であり、由来と無効化条件が付きます。
Compact(圧縮)
Section titled “Compact(圧縮)”複数の項目を要約・統合して置き換えることです。最も危険な動詞です。 圧縮は由来と留保を落とします。
圧縮の出力が依拠されるなら——正規層に入る、または依拠されている項目を置き換えるなら——その圧縮は正規変更であり、Warrant を要する。
門のない圧縮の連鎖が 要約ロンダリング です。生ログの圧縮結果を生の層に置くだけなら自由ですが、圧縮結果が元の記録の代わりに依拠され始める瞬間、それは昇格と同じ行為になります。
プロジェクト現実(完全には捕捉できない)└─ Context Pool(記録された基質 = 状態面の総体) ├─ raw(生の記録) ← capture は自由 ├─ provisional(暫定投影) ← 構造化も自由 └─ canonical(正規投影) ← 昇格には Warrant- プロジェクト現実 は常にプールを超過します。プールの外に、未記録の現実が残ります。
- 永続状態投影 は、プールのうち由来と正規性が登記された領域(正規+暫定)です。
- Canonical State は、プールの正規層です。
- Memory(記憶)は、プールのうち高リーチの領域です。詳しくは One Memory through PCE を参照してください。
- 不明点は、プールの外(未記録)にも、中(未参照・未昇格)にもあります。
- 記録は自由である。capture に進行根拠を要求してはならない。
- プールの項目は層を持ち、層が既定の依拠可否を定める。
- 正規層への移動は遷移であり、進行根拠を要する。
- 依拠される圧縮は正規変更として扱う。
- Compile の断面は、項目ごとに層と依拠可否を明示する。
- 高リーチ面には正規層の項目しか置いてはならない。
- 高リーチ項目の適用可否は、想起のたびに現在の文脈に対して判定する。
- 検索可能性を依拠可能性と混同してはならない。