Core Model
このページは、PCE 3.0 の正式なモデルを読むためのページです。
初めて読む場合は、先に PCE in 5 minutes で「次のアクターは、これに依拠してよいか」という入口を掴むと読みやすくなります。
PCE 3.0 の Core Model は次です。
State -> Transition -> Contract -> Warrant -> Projection -> Stateこの循環が、PCE 3.0 の正規モデルです。
一つ注意があります。この循環は時系列のパイプラインではありません。 一つの遷移が通過する審理の構造です。契約は遷移の実行前に定まり、進行根拠は実行の後に判定されることが多い。順序は「遷移候補が、契約に照らして審理され、根拠を得て、投影として記録される」と読みます。
なぜこの循環なのか
Section titled “なぜこの循環なのか”Core Model は、検証地平の公理と依拠の定理 から導かれます。
後続アクターは先行するすべてを再検証できないため、必ず何かに依拠します。依拠が不可避なら、正規状態を変えるすべての遷移は「後続の依拠を変える行為」であり、統治が必要になります。循環の各語は、その統治の持ち場です。
State(状態)
Section titled “State(状態)”状態とは、いま成り立っていることです。コード、仕様、判断、記録、権限、未確定事項、信頼、運用制約を含みます。うち、後続アクターが再検証なしに依拠してよい部分が Canonical State(正規状態)です。
Transition(遷移)
Section titled “Transition(遷移)”遷移とは、状態を変える候補または実行です。実装、レビュー、承認、調査、候補比較、記憶昇格、撤回、停止、再開はすべて遷移です。正規状態を変える遷移は、後続の依拠を変えます。
Contract(契約)
Section titled “Contract(契約)”契約とは、遷移の許可範囲です。何をしてよいか、何をしてはいけないか、何を比較し、どこで止まるかを定めます。契約は依頼側にとっての依拠の基盤でもあります。契約があるから、依頼側は「この範囲は変わらない」と依拠したまま、実行を委ねられます。
Warrant(進行根拠)
Section titled “Warrant(進行根拠)”進行根拠とは、遷移の結果に依拠してよいと言える根拠です。証拠、権限、リスク、戻し方、責任、候補の採用理由に加え、失効条件を含みます。根拠は先例の引用によって軽くできます。
Projection(投影)
Section titled “Projection(投影)”投影とは、遷移の結果のうち、依拠してよい範囲を明示して残す状態です。投影は記録であると同時に、作り手による「これは依拠に耐える」という表明(Commitment)です。判断理由、残った不明点、採用しなかった候補、再利用できる証拠を必要に応じて扱える形にします。
循環の下にある基質
Section titled “循環の下にある基質”Core Model の循環は、記録の基質の上で回ります。Context Pool(コンテキストプール) は状態面の総体であり、正規性の勾配で三層に分かれます。
Context Pool raw(生の記録)→ provisional(暫定投影)→ canonical(正規投影) 自由に記録・構造化 │ └─ 昇格には Warrant遷移は、プールから Compile された断面(項目ごとに依拠可否つき)を受け取り、結果をプールへ書き戻します。記録は自由で、門は正規層の手前に置かれます。だから候補と観測は無制限に溜められ、後続が既定で依拠する領域だけが統治されます。
記録は自由である。検索できることは、依拠してよいことではない。
PCE 3.0 では、プロンプト、仕様、計画、プロトタイプ、実装ノート、レビュー説明をすべて投影として扱います。これらは仕事を進めるための地図です。
しかし、地図は現実そのものではありません。現実には、既存コード、実行環境、利用者、制度、過去の判断、暗黙の制約があります。アクターは常に、状態そのものではなく、状態から切り出された投影を見て遷移します。
この地図と現実の差分が、不明点です。不明点は単なる情報不足ではなく、依拠の空隙 です。依拠が必要なのに、正当な根拠がまだない場所です。
PCE では、不明点を推測で埋めて確定事実にしません。進めてよいだけの根拠があれば進行根拠に含め、根拠が足りなければ Obstruction(阻害要因)として止め、後続判断に渡せる仮説なら Completion Candidate(完了候補)として残します。
Responsible Continuation
Section titled “Responsible Continuation”Responsible Continuation(責任ある継続)は、次の条件を満たす遷移です。
- 契約によって許可範囲と比較対象が定まっている。
- 進行根拠によって、結果に依拠してよい理由が示されている。
- 投影によって、依拠してよい範囲が明示された状態が残る。
- 状態と投影の差分が不明点として扱われている。
- 失敗時に Obstruction(阻害要因)として止められる。
- 進んだ結果、後続が依拠できる状態がより豊かになる。
第二のループ: 複利
Section titled “第二のループ: 複利”Core Model の循環には、もう一つのループが重なっています。
エピソード n: 候補生成 -> 比較 -> 昇格 -> 正規状態 + 先例 + 採用理由 + 不採用候補
エピソード n+1: より豊かな正規状態から開始 -> 根拠は先例の引用で軽くなる -> 比較は過去の採用理由に助けられる -> 候補は最初から良くなるPCE は、単一のエピソードの質を直接上げる理論ではありません。投影と先例が蓄積されることで、エピソードの列が減衰でなく複利で積み上がる ことを保証する理論です。これが Praxis Continuation Engine の「Engine」の意味です。
AI への指示
Section titled “AI への指示”AI への指示は、作業依頼ではなく Transition Contract(状態遷移契約) になります。
この状態からこの状態への遷移を、この契約の範囲で実行し、この進行根拠を満たせない場合は止まる。結果は、依拠してよい範囲を明示した投影として返す。この形にすると、AI は「よい感じに作る」のではなく、候補生成、比較、実行、証拠生成といった責任ある遷移の一部を担当します。