PCE in 5 minutes
このページで分かること
Section titled “このページで分かること”- PCE 3.0 の全体が、なぜ一つの問いに還元されるのか
- 最初に理解するための三語
- PCE の正式語彙へどう接続するか
- 明日から AI への指示やレビューで何を変えればよいか
仕事は、一人のアクターでは終わりません。あなたの成果の上に、次の開発者、次の AI、CI、明日の自分が作業を積み上げます。
そして後続アクターは、先行するすべてを再検証できません。時間も、注意も、権限も足りないからです。これは怠慢ではなく、継続する仕事の構造です。
だから後続は、必ず何かに Reliance(依拠) します。再検証なしに、前提として使うということです。
PCE 3.0 の問いは一つだけです。
次のアクターは、これに依拠してよいか。AI の出力を完成品として扱えないのは、この問いにまだ答えていないからです。答える前のものが候補で、答えた根拠が進行根拠で、答えたあとのものが正規状態です。
最初に覚える三語
Section titled “最初に覚える三語”Rough Candidate -> compare / warrant -> Canonical StateCandidate(候補)
Section titled “Candidate(候補)”AI、人間、CI、ツールが出したものは、まず候補です。
コード差分、仕様解釈、テスト結果、レビューコメント、Slack の合意、記憶に残す要約は、どれも重要です。ただし、それらはまだ依拠してよいものではありません。比較し、磨き、必要なら組み合わせる素材です。
Warrant(進行根拠)
Section titled “Warrant(進行根拠)”候補に依拠してよいと言える根拠の束です。
進行根拠には、証拠、権限、範囲適合、リスク、戻し方、責任の引受が含まれます。さらに、なぜその候補が他の候補よりよいのか、いつこの根拠が失効するのかも含めます。
Canonical State(正規状態)
Section titled “Canonical State(正規状態)”後続アクターが再検証なしに依拠してよい状態です。
正規状態に入ったものは、次の開発者、AI、CI、ドキュメント、運用判断が前提にします。よい正規状態は、次の判断を速くし、次の実装を楽にし、次の学習を深くします。
六つの基本ルール
Section titled “六つの基本ルール”1. AI の出力は、まず候補である
Section titled “1. AI の出力は、まず候補である”AI が作ったコード、説明、要約、判断は、すぐに依拠の対象にしません。それは「比較し、磨き、採用するかもしれない候補」です。
2. 候補は無料である。恐れず出させる
Section titled “2. 候補は無料である。恐れず出させる”生成はほぼ無料になりました。候補を一つに絞って祈るのではなく、複数出して、保存される構造、失われる構造、リスク、必要な証拠を比べます。統治するのは生成ではなく昇格です。
3. 候補を正規状態に入れるには、根拠が必要である
Section titled “3. 候補を正規状態に入れるには、根拠が必要である”根拠には、少なくとも次を含めます。
- 何を確認したか。
- 誰が進める権限を持つか。
- 変更範囲は契約内か。
- 失敗したとき戻せるか。
- 残るリスクを誰が引き受けるか。
- なぜこの候補がよりよいと言えるか。
- この根拠はいつ失効するか。
4. してよいことと、してはいけないことを分ける
Section titled “4. してよいことと、してはいけないことを分ける”AI に「実装して」とだけ渡すと、仕様解釈、設計判断、リファクタリング、フォールバック追加が混ざります。
PCE では、Allowed(許可操作)と Forbidden(禁止操作)を分けます。これは AI を弱くするためではなく、依頼側が「この範囲は変わらない」と依拠できる境界を作り、AI の能力を採用済み候補の実行に集中させるためです。
5. 後続が依拠してよい形で残す
Section titled “5. 後続が依拠してよい形で残す”作業ログや推測を、そのまま記憶や仕様に入れません。
後続が依拠してよい範囲と、依拠してはいけない範囲を分け、判断理由、残った不明点、採用しなかった候補まで必要に応じて Projection(投影)として残します。
6. 根拠が足りなければ止める
Section titled “6. 根拠が足りなければ止める”止まることは失敗ではありません。根拠のないまま進むと、後続に不当な依拠を積ませることになります。
契約外の変更が必要になった、不明点が実装判断に影響した、必要な証拠が出せない。そういう場合は Obstruction(阻害要因)として止めます。
PCE の正式語彙に接続する
Section titled “PCE の正式語彙に接続する”| 最初の語 | PCE の正式語彙 | 意味 |
|---|---|---|
| 依拠してよいか | Reliance | 再検証なしに前提として使ってよいかという関係 |
| 候補 | Continuation Candidate / Transition | まだ依拠してはいけない、改善可能な素材 |
| 根拠 | Warrant | 候補に依拠してよいと言える根拠の束 |
| 正規状態 | State / Canonical State | 後続が再検証なしに依拠してよい状態 |
| してよい範囲 | Contract | 許可操作、禁止操作、不変条件、停止条件 |
| 残すもの | Projection | 依拠してよい範囲を明示して残す状態 |
正式な Core Model は次です。
State -> Transition -> Contract -> Warrant -> Projection -> Stateこの循環を満たす遷移が Responsible Continuation(責任ある継続)です。
明日から変えること
Section titled “明日から変えること”AI に依頼するときは、次のように変えます。
悪い依頼: この Issue を実装して。
よい依頼: まず候補を2つ出し、保存される構造とリスクを比較して。 採用候補を選んだら、Presentation 層だけを変更してよい。 Domain 層、API 仕様、AuthError 型は変更しない。 不明点が実装判断に影響する場合は止める。 変更ファイル、テスト結果、採用理由、残った不明点を返す。レビューするときは、「次のアクターはこれに依拠してよいか」を先に見ます。
- 候補は比較され、よりよい理由が示されているか。
- 採用しなかった候補の理由が残っているか。
- 候補を正規状態にしてよい根拠があるか。
- 禁止された変更が混ざっていないか。
- テスト結果だけで完了扱いしていないか。
- 未確認の推測が仕様や記憶に混ざっていないか。